量子コンピュータの原理や種類|よくある勘違いを解説

量子コンピュータの原理や種類|よくある勘違いを解説 量子力学
量子コンピュータの原理や種類|よくある勘違いを解説

「量子コンピュータって何? 量子コンピュータの原理は? 量子コンピュータにはどんな種類があるの? 量子コンピュータってコンピュータの上位互換? 物理学って何だか難しそうだな…」

こういった疑問に物理学修士の筆者が答えます。

結論

量子コンピュータとは量子の重ね合わせを使って計算する方法です。詳細は本記事にて解説します。

本記事の参考文献

本記事の内容

量子コンピュータの原理

量子コンピュータの原理(電子の二重スリット実験)

上記のように、二重スリットとスクリーンがあります。電子銃で電子を放出すると二重スリットを通ってスクリーンに電子の跡が残ります。電子は波と粒子の両方の性質を持っているため、しばらく電子銃で打ち続けるとスクリーンに波が干渉したような跡が残ります。この波は「確率の波」で、電子の跡が多い場所(上写真スクリーン真ん中)ほど、電子の存在確率が高くなります。また電子が干渉を起こすということは電子が二重スリットを同時に通過したことでもあるのです。つまり1つの電子が、二重スリットを通る際は2つに分身するのです。このように電子がいろいろな場所に同時に存在することを電子の重ね合わせといいます。この重ね合わせは電子のような小さな粒子から、フラーレン(原子60個の分子)のような比較的大きな粒子までいろいろな粒子に見られます。

電子の四重スリット実験

次に上写真のような四重いスリットで考えて下さい。こちらも二重スリットと同じように電子の重ね合わせで、電子が四重スリットを同時に通過します。
ではこの四重スリットの中に1つだけ当たりがあるとするなら、どうやって調べればいいでしょうか。量子力学を使わなかったら四重スリットの隙間を1つ1つ調べる必要があります。しかし、量子力学を使うと「重ね合わせ」より、四重スリットの隙間を4つ同時に調べることができます。これが量子コンピュータが特定のパターンだけ早く計算できる原理なのです。ただし折角当たりを見つけても、工夫をしなければ、「確率の波」に従って電子がスクリーンに映し出されるだけで、当たりの情報を取り出せないのです。工夫とはどういうものかというと、例えばグローバーの解法では当たりの波だけ大きくなるように、複数の波を重ね合わせて当たりの情報を取り出すのです。ちなみにパソコンのビットという情報単位があるように量子コンピュータにも量子ビットという単位があります。n個の量子ビットが重ね合わせをできる数は2nとなります。つまり5量子ビットであれば32通りを同時に調べることができるのです。

量子コンピュータの種類

量子コンピュータの種類

量子コンピュータには「1.超電導回路方式」、「2.イオン方式」、「3.半導体方式」、「光方式」の4つの種類があります。それぞれの詳細を解説していきます。

1.超電導回路方式

現在最もメジャーで、最も開発が進んでいている方式が、超伝導体を使った超電導回路方式です。Googleが2019年に「最先端のスーパーコンピュータでも解くのに1万年かかる問題を、量子コンピュータは200秒で解いた」という発表がありましたが、その時の量子コンピュータの種類も超電導回路方式なのです。超電導とは-270℃程度に金属を冷やすと、金属の電気抵抗が0になるという現象でリニアモーターカーや病院のMRIにも超電導技術が使われています。この方式では量子ビットの集積化やエラー率が1%以下というメリットがありますが、重ね合わせが不安定だったり、金属を冷やすのにコストがかかるというデメリットがあります。ちなみにIBMは超電導回路方式を実際に販売しているのです。

2.イオン方式

イオンとは原子が電荷を帯びた状態で、イオン方式の量子コンピュータではそのイオン1つを1量子ビットとして使います。真空の容器に入ったイオン1個1個を演算の順番にレーザーで照射して操つります。それらから情報を取り出す時には別のレーザーを照射するという原理です。この方式ではエラー率が0.1%以下の精度というメリットがありますが、真空容器中で操れるイオンが数十個程度だったり、真空容器が必要というデメリットもあります。

3.半導体方式

Intelを筆頭に研究が進められているのが半導体方式です。現代のコンピュータのCPUには、トランジスタという電気信号を送ると電流が流れる回路が10億個あります。これ同じようにたくさんの量子ビットの集積化が期待されているのが、半導体方式なのです。このように高密度の集積化というメリットがありますが、まだまだエラー率が高いというデメリットもあります。

4.光方式

光は光子という素粒子が基になっていて、私たちが目にする光は莫大な光子の集まりなのです。素粒子とはそれ以上分解できない粒子で、電子も素粒子であり、光子も電子と同じように「波と粒の性質」を持っています。つまり光方式とは光子の重ね合わせ使った方式なのです。光方式の量子コンピュータができれば、計算結果をそのまま光ファイバに通して、外部と情報のやりとりができるというメリットがありますが、一部の演算が確率的にしか行えないというデメリットがあります。

量子コンピュータのよくある勘違い

量子コンピュータのよくある勘違いとして「1.量子コンピュータはコンピュータの上位互換」、「2.量子コンピュータは重ね合わせの原理で早く計算できる」、「3.量子コンピュータは数年後に実用化される」があります。それぞれを解説します。

量子コンピュータのよくある勘違い

1.量子コンピュータはコンピュータの上位互換

量子コンピュータはコンピュータの上位互換ではなく、限られた計算にだけコンピュータより高いパフォーマンスを発揮することができます。現在量子コンピュータでは60種類の計算方法しか確率されておらず、研究者たちは量子コンピュータの使い方を考えあぐねているのです。

2.量子コンピュータは重ね合わせの原理で早く計算できる

量子コンピュータは量子力学の重ね合わせの原理を使っていますが、ただ重ね合わせの原理を使っただけでは答えが取り出せなかったりするので、必ずしも重ね合わせの原理をつかってコンピュータより早く計算できる訳ではありません。

3.量子コンピュータは数年後に実用化される

Googleが2019年に「最先端のスーパーコンピュータでも解くのに1万年かかる問題を、量子コンピュータは200秒で解いた」と発表していたり、IBMがすでに量子コンピュータを販売していたりと、多くの人たちは量子コンピュータの実用化に期待しています。しかし、量子コンピュータは計算ミスも多く、限られた用途しか使えない状態なのです。多くの専門家が量子コンピュータ実用化を少なくとも10年以上先になると予測しています

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