
「価格戦略論って何? パワー・プライサーってどういう意味? プライス・カスタマゼーションを簡単に知りたい。 経営学ってなんだか難しそうだな…」
こういった疑問に経営学修士(MBA)の筆者が答えます。
結論
価格戦略論とはマーケティング・コンサルティング会社CEOヘルマン・サイモンとハーバード・ビジネス・スクール教授ロバート・J・ドーランの「価格戦略を体系的に書かれた理論書」です。詳細は本記事にて解説します。
本記事の参考文献
本記事の内容
価格戦略論とは
価格戦略論とはマーケティング・コンサルティング会社CEOヘルマン・サイモンとハーバード・ビジネス・スクール教授ロバート・J・ドーランの「価格戦略を体系的に書かれた理論書」です。価格戦略論では、パワープライサー(顧客に価格を決めてもらうのでなく、主体的に正しい価格を決めること)や、プライス・カスタマイゼーション(顧客に合わせてきめ細かく価格を設定すること)を提唱しています。以下に詳細は解説します。
一般的な価格設定

一般的な価格設定では「希少性」、「生産性」、「需要性」、「製造コスト」を計算しています。それぞれの詳細は以下のようになります。
希少性
希少・貴重なものほど、高価になります。例えば英国デビアスはダイヤモンドのシェアを80%以上持っています。生産量は毎年増えているのですが、あえて流通量を制限して、希少性を高くしているのです。
生産性
生産性の高いものほど、大量に作ることができるため、安くなります。例えば、職人が作ったブランドのバックと工場で大量生産したバックでは価格が違います。
需要性
需要の多いものほど高くなります。例えばバンクシーの絵は作品数の割に需要が多いため、高値で売買されます。
製造コスト
加工品であれば、その原料費、加工費、運搬費などがそれぞれ必要となります。ニンテンドースイッチの原価率が高い(価格のほとんどが原価で利益が出せない)のは、ニンテンドースイッチ生産をすべて外注しているからです。
顧客の種類

顧客の種類は①上限価格制約型、②ブランド重視型、③安価品購買型、④販売店重視型、⑤商品品質重視型、⑥衝動買い型があります。価格設定を上で、顧客の種類を知ることが重要になります。
①上限価格制約型
可処分所得の中で購入する顧客です。家計簿をつけている主婦や、お小遣い制のサラーリーマンなどがこれに該当します。
②ブランド重視型
顧客特定のブランドであれば、価格の高低は気にしない顧客です。スターバックスでマックブックを開いている人や、チョコレートは明治の「たけのこの里」しか食べないという人です。
③安価品購買型
とにかく安いものを買う顧客です。ドラックストア「コスモス」や、コストコで買う人がこれに該当します。
④販売店重視型
お気に入りの販売店で必ず購買し、販売員のすすめで購買する傾向がある顧客です。好きな服はお気に入りの店で買う人や店員に聞いて買う人も多いのではないでしょうか。
⑤商品品質重視型
商品品質がもっともよいものを買う顧客です。電子機器や車は日本製、食材はオーガニックという人です。
⑥衝動買い型
本来その商品を買う意思はなかったのに、購買チャンスが訪れたときに思わず買ってしまう顧客です。
パワー・プライサー

パワー・プライサーとは価格戦略論で提唱された、市場に価格決定を委ねず、顧客の要望に応える価値を創り出し、主体的に正しい価格設定をする経営戦略です。例えば、スイスの腕時計メーカースウォッチのコンセプトは「低価格のスイス腕時計」です。価格は常に40ドルで、単純で正直な価格で、値上げも値下げもしない。価格で顧客に「スウォッチを買うあなたは間違っていませんよ」というメッセージを伝えているのです。ちなみにバスキラーとう殺虫剤は、害虫駆除保証をつけ他社の10倍の価格設定を実現しました。
↓高価格戦略と低価格戦略について知りたい方は↓
プライス・カスタマイゼーション(売上と利益を最大化する価格戦略)

プライス・カスタマイゼーションとは、顧客に合わせてきめ細かく価格設定して利益最大化を目指すことです。例えば皆さんもご存じの通り、旅客機は席で料金が変わります。ビジネスクラスはエコノミークラスの2倍の料金、ファーストクラスはビジネスクラスの2倍の料金と言われています。これはプライス・カスタマイゼーションで売上と利益を最大化するためです。この仕組みを解説します。
400席の旅客機、乗客1人当たりの変動費が1万円の場合を考えてみます。価格が変わると販売量(買う人数)がどう変わるかをしめしたのが、上写真は価格ー販売量反応曲線です。この例では価格1万円で400席を完売するが、これでは粗利(売上から変動費を差し引いた利益)の合計は0円で儲からないです。価格を上げると、買う人数が曲線に沿って徐々に減り、39万円で0人。この三角形の面積は、潜在的に得られる最大の利益(潜在利益)を示しています。この例では、潜在利益は7600万円。これは価格を価格―販売量反応曲線の通りに顧客全員にきめ細かく設定して、はじめて得られる利益ですが、現実にはそこまで価格はきめ細かくできません。

上写真左は、価格を1万円と39万円の中間をとって20万円単一価格にした場合です。顧客が価格ー販売量反応曲線の通りに買うと、20万円で買う人数は200人で、全座席数400席の半分。総粗利は3800万円で、潜在利益(7600万円)の半分になります。「20万円は高い」といって乗らない200人分の「もっと得られた利益」が生じるからです。
そこで上写真右のように、ファーストクラスを27万円、エコノミークラスを14万円と価格を2種類にすると、両社合計の総粗利は5057万円。単一よりも33%増になります。もしビジネスクラスを加えて3段階にすれば、もっと多くの潜在利益を刈り取れます。つまり、複数価格にすれば利益が増えます。
このように顧客ニーズに対応してきめ細かく複数の価格を設定することで、逃していた潜在利益を獲得することができるのです。
その他プライス・カスタマイゼーション

プライス・カスタマイゼーションには以下のような方法があり、企業の収益性が大きく向上させることができます。
- 製品ラインアップ…航空会社のエコノミークラス、ビジネスクラス、ファーストクラスのように、顧客に異なる価格帯の製品を選ばせます。
- 顧客別管理…会員ステージ別に割り引きます。例えば楽天銀行のハッピープログラムでは、「ベーシック」「アドバンスト」「プレミアム」「VIP」「スーパーVIP」の5種類の会員ステージを設け、ポイント2倍など、それぞれにお得な特典が用意されています。
出典:楽天銀行ハッピープログラム - 購入者の特性…例えば映画チケットでは学生や小学生を割引きます。
- 取引特性…週末と休日の料金を変えたり、大量購入の場合に割引いたりします。
↓さらに価格戦略論について知りたい方は↓
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