
「チェーンストア理論って何? チェーンストア理論ってどう使うの? チェーンストア理論ってオワコン? 経営学ってなんだか難しそうだな…」
こういった疑問に経営学修士(MBA)の筆者が答えます。
結論
チェーンストア理論とは渥美俊一氏が提唱した、鎖(チェーン)の一つひとつの輪は小さく弱いが、一定の法則で多数の輪がつながれば強くなり、大きな力を発揮させるのがチェーンストア理論です。詳細は本記事にて解説します。
本記事の参考文献
本記事の内容
チェーンストア理論とは

チェーンストア理論とは渥美俊一氏が提唱した、鎖(チェーン)の一つひとつの輪は小さく弱いが、一定の法則で多数の輪がつながれば強くなり、大きな力を発揮させるのがチェーンストア理論です。1960年代から、スーパーマーケットを始めとした多くの企業が、チェーンストア理論を実践し、成長してきました。チェーンストアとは、11店舗以上の店を集中管理して販売する小売業者のことで、 店舗数が増えると大きな効果が生まれ、大規模になれば、規模の経済により、よい商品を安く提供できるようになります。 渥美氏は「国民の豊かな暮らしを実現したい」という思いからチェーンストア理論を研究したのです。
チェーンストア理論の普及「ペガサスクラブ」

渥美氏は「日本社会の恥部は暮らしの貧しさ、克服するにはチェーンストア産業づくりが必要」と考えました。それに共感する同士を集め、「ペガサスクラブ」を創業し、チェーンストア理論を普及させたのです。
ペガサスクラブとは「人々の毎日のくらしを豊かにする」その目標のために、様々な規模の流通業が一堂に集まりともにチェーンストア経営システムの開発を行う場です。
出典:ペガサスクラブ
↓ペガサスクラブメンバー↓
業種 | 企業名 |
小売業 | アルペン |
小売業 | イトーヨーカ堂 |
小売業 | キタムラ |
小売業 | ケーズ |
小売業 | コメリ |
飲食業 | サイゼリヤ |
小売業 | しまむら |
小売業 | ジャスコ |
飲食業 | すかいらーく |
小売業 | 西友 |
小売業 | 西武百貨店 |
小売業 | ダイエー |
サービス業 | ダスキン |
小売業 | ビックカメラ |
小売業 | ニトリ |
小売業 | マツモトキヨシ |
飲食業 | 吉野家 |
小売業 | ライフ |
チェーンストア理論の絶対原則

チェーンストア理論には以下のような絶対原則があります。
- 大部分の人々が使う品(大衆品)と
- 日常的により高頻度で使い品(実用品)を
- より低い売価で
- より多くの地域で
- 同じように提供する
これはPanasonic創業者松下幸之助氏が提唱した水道哲学(人々が水道水のように容易に商品を手に入れられる社会を目指す)と同じ経営思想なのです。
チェーンストア理論の手法

チェーンストア理論の手法の1つに標準化があります。標準化するために次の1~5を行う必要があります。
- その店舗の運営にベストの方法を発見
- 関係者を教育
- その通り実行できる状態にする
- 一定期間が過ぎたらルールを改善・修正
- 0~4の手順を繰り返して例外発生を減らす
4~5を愚直に実践した結果、ニトリやくら寿司のように、長年にわたって店舗数・売上・利益を着実に成長させる企業もありますが、いきなりステーキのように、5年間で400店舗の大量出店をしたが、サボって破綻の淵に追い込まれた企業もあります。例えばチームを運営していると、ある人数を超えた途端、管理が難しくなります。店舗数が5店を超えると管理の限界を感じるようになり、20店で命令が無視され、30店で現場の報告が信頼できなくなるのです。 チェーンストア理論では、4~5の標準化を行い、各々の段階で訪れる困難を乗り越えていきます。また、20~30店の壁はまったく新しいマネジメントの仕組みをつくれば乗り越えられますが、50~100店で次の限界が来ます。ここで時間をかけて経験を積み重ね、綿密で周到な新しいシステム設計を行う必要があるのです。この段階を乗り越えれば従業員の考え方や行動が変わり始め、企業文化のレベルが一気に上がります。さらに200店を超えると、チェーンストアが威力を発揮し始めるのです。ニトリの似鳥昭雄会長もインタビューで「200店になると交渉力は倍になった。さらに原材料を調達して集中発注して、さらに価格を下げられた」と述べています。
このようにチェーンストア理論では、本部による大量集中仕入れでコストを徹底的に下げ、店舗作業を徹底的に標準化し、例外が出ないようにして規模の経済を追求し続けます。
チェーンストア理論はオワコンか?

いまやチェーンストア限界論がささやかれるようになりました。例えば、チェーンストア理論の基本は、本部主導の徹底管理で、各店舗に仕入れ権限などをもたせる個店経営は否定します。しかし、ドン・キホーテは店舗に自由裁量を与え、個店経営を突き進み、成長を続けています。 2019年には業績が低迷する総合スーパー・ユニーに出資し、ユニー店舗を「ドンキ化」して、チェーンストア経営から個店経営に大きく切り換えました。売る気持ちが弱かった現場社員に仕入れ権限を与え、自ら売るように意識させたところ、業績は一気に改善しました。
またユニクロでは、都市部の大型店舗には本部から現場へ大幅に権限を委譲しました。 小売業各社も脱チェーンストアという言葉を使うようになりました。他にも飲食業界では、餃子の王将がチェーン店毎にオリジナル・メニューを販売しているのは有名です。
ニトリの似鳥会長は、インタビューで「チェーンストア限界論が言われるのはそれができていないから。理論は正しい」と述べています。また、法政大学の矢作敏行名誉教授は「店舗が地域や立地に合った品揃えや店舗運営をする のは当たり前。商品別・店舗別・地域別に売れているものがわかるのは、チェーンストアの強み。個店で最適な品揃えができるのもこの情報のおかげだ。個店経営はチェーンストア理論の否定ではなく、進化形だ」と述べています。
日本のチェーンストアの現状

日本の小売業界の売上は伸びましたが、収益は米国の半分で、規模拡大も極端に鈍化しています。渥美氏は「大手ほど自己満足に陥って革新性を失った。売上のみ追い求め、人海戦術に頼る。標準化、 マス化、エンジニアリング(状況を数字で把握して分析し、システムを改善すること)が徹底できていない。現場の頑張りを期待してはダメだ」と厳しく指摘しています。
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