ブランディングの科学11選|CEPやアベイラビリティを解説

ブランディングの科学 経営
「ブランディングの科学って何? ブランディングってどればいいの? CEPってどういう意味? メンタル・アベイラビリティとフィジカル・アベイラビリティの違いは? マーケティングってなんだか難しそうだな… 」

こういった疑問にMBA学生の筆者が答えます。

結論

「ブランディングの科学」とは南オーストラリア大学教授バイロン・シャープの著書で、消費者行動をデータで細かく検証した上で、新たな戦略立案とブランディングの方法が記載されています。詳細は本記事にて解説します。

本記事の参考文献

本記事の内容

1.ブランディングは顧客数を増やすことが最も重要

ブランディングは顧客数を増やすことが最も重要

自社の担当製品のシェアはライバルの半分、ロイヤル顧客(ファンの人)も半分、ブランドスイッチャー(すぐにブランドを乗り換える人)が売上の3分の2を占めているとします。多くの人は「ライバルと自社は同じ品質なのに、顧客はライバルより自社の方が低品質だと思っている」と分析して「品質の高さを訴求して、ロイヤル顧客を増やそう!」と考えます。その結果、ライバルとの比較広告を出したりしますが、これではいつまで経ってもライバルには勝てないです。なぜなら顧客数が少ないとロイヤル顧客の割合も少ないことが分析で明らかになっているからです。

例えば、英国の洗剤でシェア1位のパーシル(22%)とシェア5位のサーフ(8%)を比較します。年間の市場浸透率(全消費者の購入者比率)はパーシル41%、サーフ17%、年間の購買頻度はパーシル3.9回、サーフ3.4回です。市場シェアが大きなパーシルは、顧客数(=市場浸透率)も購買頻度も高いですが、シェアが小さいサーフは顧客数が小さく購買頻度も低かったのです
その他157ブランドの調査でも結果は同じでした。このように顧客数が少ないと購買頻度も低いパターンはさまざまな分野で観察されています。これをダブル・ジョパディ(二重処罰)の法則といいます。つまり、ブランド成功のカギは何はさておき、顧客数を増やすことなのです。

2.売上最大化は既存顧客の維持よりも新規顧客獲得

売上最大化は既存顧客の維持よりも新規顧客獲得

「既存顧客を大切にせよ。新規顧客獲得は既存顧客維持の5倍の費用がかかる」という、「顧客ロイヤルティのビジネス戦略」に関する第一人者フレデリック・F・ライクヘルドの理論は間違いだとバイロンは指摘しています。例えば、顧客が100人いる市場にA社とB社だけあって、顧客数がA社80人(シェア80%)、B社20人(20%)のとき、顧客が10人入れ替わると、顧客離反率はA社80任(シェア80%)、B社が50%、市場シェアが大きいと顧客離反率は低くなります
実データで検証しても1989~1991年の米国顧客離反率は、1位のポンティアック(シェア9%)は58%、9位のホンダ(4%)は71%、英国やフランスでも同じです。
他にも、米国の車売上は新規顧客が半分、既存顧客が残り半分であり、シェア2%の会社が頑張って既存客の離反をゼロにすると、既存客の売上は倍です。新規客とあわせても全社売上は1.5倍にしか増えず、市場シェアは1%増の3%に留まります。
しかし全購入者の半分が他社に乗り換えるという市場全体を見ると、最大50%の市場シェア獲得が可能なのです売上を伸ばす可能性は、顧客離反防止ではなく、新規顧客獲得の方が圧倒的に大きいのです。しかも、顧客離反率を下げるのは現実には極めて難しく、実際に米国で顧客離反率が25%以下のブランドは1社もない。つまり、成長するカギは新規顧客獲得なのです。

↓顧客ロイヤリティについて知りたい方は↓

3.最重要な顧客は「ライトユーザー」

最重要な顧客はライトユーザー

「マーケティングの父」と呼ばれるアメリカの経営学者フィリップ・コトラーは「マスマーケティングは時代遅れだ」と主張しているますが、消費者の購買行動を研究すると、むしろマスマーケティングは重要なのです。「広告に大金かけてマスマーケチングしているけれど、ペイするのか」と思ってしまいますが、実はコカ・コーラが狙う典型的なコーラの購入者は年0~1本飲むライトユーザーで、50%を占めます。パレートの法則では、「上位20%の購買客が売上の80%を占める」といわれるが、実際には売上の5%しか占めません。逆に売上の50%は稀に購入するライトユーザーでなのです。彼らは購買頻度が少なく他社ブランドも買う。これは私たちが複数の銀行口座を持つように、銀行業もそうなのです。さらに消費者を長期間調査すると、ヘビーユーザーがライトユーザーになったり、逆にライトユーザーがヘビーユーザーになることも多いです。あらゆるブランドで、平均状態に回帰する購買行動適正化の法則が起こっています。

4.似たような自社商品を、同じ顧客にどんどん売る

似たような自社商品を、おなじ顧客にどんどん売る

よくマーケティング戦略で聞く「差別化して特定セグメントの顧客層をターゲットに狙え」と言うのは間違ってるのです。
例えば、ダイエット飲料は女性を対象に広告を出していますが、レギュラー飲料とダイエット飲料を分析すると同じ顧客層に売れていて、男女比率も同じです。より幅広いカテゴリーで調査すると、競合ブランドでも同じタイプの消費者が買っています。例えばガーナチョコレートを買う人と明治チョコレートを買う人は同じで、どちらも買います。「そんなの当たり前」と思うかもしれませんが、多くの企業は2つ商品の顧客ターゲットを分けて考えているのです。

5.ブランド愛好者よりも「ブランドに興味がない人」が大切

ブランド愛好者よりもブランドに興味が無い人が大切

アップルとハーレーダビッドソンは熱狂的顧客が多いと思われていますが、事実は違うです。
パソコンの反復購買率(同じブランドを再購入する比率)はシェア1位のDELL71%、HP52%、アップル55%で、熱狂的な顧客の影響は見られません。これは他社パソコンとの互換性がないことで説明できます。
また熱狂的ハーレーレイダーは全体の10%で、売上は全体のわずか3.5%に留まります。低所得で収入を部品に注ぎ込み、しかもバイクを買い換えないので売上貢献度は低いのです。実はハーレー所有者全体の40%は不満足で、車庫にバイクを入れっぱなしなのです。つまり、ハーレーもアップルも、熱狂的信者は少数なのです。売上で最も重要なのは、ブランドをあまり深く考えずに買い、売上に大きく貢献してくれる人たちなのです。

6.差別化ではなく、独自性を追究する

差別化ではなく、独自性を追究する

マーケティングでは「ブランドを差別化し、消費者に分かりやすく示せ」と言われ、差別化はブランドで必要不可欠と思われています。しかし実際に調査によると、消費者は企業が仕掛ける差別化にほとんど気づいていないのです。例えばアップルユーザーの77%は「アップルは他ユーザーと異なる」、「ユニーク」とは認識していないのです。マックは独自システムですが、多くのユーザーは技術に疎いです。他社パソコンと同じ作業をするためにマックを買っており、現実には大成功したアップルでさえ、差別化には成功していないのです。ここから消費者に製品の違いを納得させる必要はないことがわかります。注力すべきは、消費者の購買を促す仕組み作り、つまりブランディングなのです。
差別化は長く続きませんが、独自性のあるブランディングは1度構築すれば長続きします。
ブランドロイヤリティを育てるには、消費者にブランドがすぐわかりように目立たせることです。例えばマクドナルドの金色のアーチ、コカ・コーラの赤、アップルのリンゴマークは、他社ブランドとの違いが一目瞭然です。情報過多に陥っている現代の消費者も、ブランドが独自性をもち一目でわかれば、商品についてあれこれ考えたり探し回る必要がなくなるため、消費者自身の生活も快適になるのです。

7.メンタル・アベイラビリティとフィジカル・アベイラビリティ

メンタル・アベイラビリティとフィジカル・アベイラビリティ

ブランディングで顧客を獲得するために何よりも重要なのは、メンタル・アベイラビリティとフィジカル・アベイラビリティの2つです。メンタル・アベイラビリティとは購入するときにブランドが思い出されやすいことです。例えば「昼食」、「うまい、やすい、はやい」から吉野屋を思いつく人も多いのではないでしょうか。これがブランド連想なのです。あなたが町で吉野家を見かけ、店で食べるたびに、ブランド連想が築かれて強化されているのです。つまり。あなたが外出先で「昼食を食べたい」と思ったとき、そば屋、大戸屋などと共に吉野家を思いだせるようになれば、それは売れるブランドなっているのです。
またフィジカルアベイラビリティとは、消費者がブランドを見つけ買いやすいことです。例えば吉野家の場合、食べたいと思ったときに、すぐ近くに店があることです。市場シェアの大きいブランドは、このメンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティがともに大きいのです。

8.CEPとは~コカ・コーラが市場を独占できる理由~

CEPとは(コカ・コーラが市場を独占できる理由)

実際の商品も、売れ筋商品はさまざまなCEPで思い出される。CEPとは例えば、暑い日や喉が乾いた時、私たちは「冷たいドリンクを飲みたい」と考えます。CEPとはこのようにモノを買う際に商品を絞り込む理由や状況のことです。トルコ市場はコカ・コーラの独占で、コーラ・タルカというローカルブランドはシェアがコカ・コーラの8分の1です。
パイロンはソフトドリンク購入時のCEPで、消費者がどれだけこの2つの商品を思い出すか調査しました。まずトルコでは、ソフトドリンクのCEPは「暖かい日に」、「少しだけ健康によいもの」、「食事にあう」、「自分へのご褒美」など8つあることを特定し、この8つのCEPで、消費者がコカ・コーラとタルカをどれだけ思い出すかを調べました。タルカの購買客は、多くのCEPでコカ・コーラを思い出しました。コカ・コーラは、ソフトドリンクの購買時にCEPで思い出される機会が多かったために、売上がタルカの8倍もあったのです。タルカが成長するには、より多くの購買客からもっとメンタル・アベイラビリティを獲得するために、CEPを増やす必要があります。このように現代のブランドといえば〇〇という強いポジショニングは必要なく、消費者がモノを買うさまざまなCEPでブランドが思い出されるようにして、豊かなメンタル・アベイラビリティを作り上げることが必要なのです

9.新ブランドでは「CEPとのリンク」を創り上げる

新ブランドでは「CEPとのリンク」を創りり上げる

新ブランド販売でありがちなのは①まず消費者にとっての便益を明確にする→②差別化のメッセージを決める→③〇〇が新発売という説得力ある広告を出すのが一般的ですが、大抵は売れずに終わります
あなたは、この1年間で新販売された洗剤の名前をあげらえるでしょうか?業界の人でも無い限り、知らないでしょう。消費者は忙しいので、差別化メッセージを出して、「新商品販売」と訴求してもそもそも気づかないのです。そこで、第一段階は、ライトユーザーからノンライトユーザーに対して広告で幅広くリーチし、新商品を買うように働きかけます。ただし、予算は全部使わずに、第2段階に残しておきます。そして第二段階では、ライトユーザーが買い続けるように、継続的にメッセージを続けます。広告は少しでも目立ち、CEPとのリンクを作ること。リンクが多い程売れるのです。さらに、新商品の広告では、小売店に並べた新商品を売り切ることが重要です。売れ行きが悪いと新商品が店頭から撤収されることも多いので、広告では売れる可能性が高いCEPを優先して、競合よりも眼立つように訴求し、顧客の脳内リンクするようにします

資生堂のTSUBAKIは、茶髪や金髪ブームに陰りが見えた絶妙なタイミングで「日本の女性は美しい」という直球メッセージを出し、広末涼子、観月ありさ、仲間由紀恵、竹内結子、田中麗奈といった黒髪の人気女優を並べて、成功を収めました。

10.安易なターゲット・マーケティングの危険性

安易なターゲット・マーケティングの危険性

「市場の特定部分に狙いを絞り込む」というのは、従来のマーケティングの定石でしたが、実は危険なのです。現実には自社ブランドも競合ブランドも似たような顧客に売れています。こんな状況で不用意に顧客のターゲット狭めるのは、売れる可能性がある市場を必要以上に切り捨てているだけなのです。

本書(ブランディングの科学)では「市場の特定の分野に絞り込む」ことに否定的ですが、実際は「選択と集中」により成功した企業も多く存在します。例えば、日立は家電事業を撤退して、インフラ事業に集中することで大きな利益を上げました。

市場の分野を広げた成功例1(大戸屋)

米国に進出した大戸屋は、ターゲットを米国にいる日本人に限定せず、全米国人をターゲットに日本と同じメニューを販売した。全米国人の方が市場はずっと大きいです。魅力ある商品をいつでも誰にでもニーズに合わせて販売する戦略のほうが、多くの販売機会をつかんで成長できるのです。

市場の分野を広げた成功例2(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)

森岡毅氏がユニバーサルスタジオジャパン(USJ)復活に取り組んだ当初、「映画のテーマパーク」だだったUSJはターゲット顧客を絞り込みすぎていました。そこで「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」とポジショニングを変え、顧客のCEPに細かく対応できるようにメンタル・アベイラビリティを構築しました。その結果、USJは売上高を2倍以上に成長しました。

 

11.高級ブランドが大金をかけて広告を出す理由

高級ブランドが大金をかけて広告を出す理由

高級ブランドでは「誰も持っていないこと」が大事。だから広告で大衆に訴えかける広告などは使えないのでは?と思うかもしれませんが、高級ブランドでもこのモデルは成り立ちます。そもそも高級ブランドを買う人の大部分は富裕層ではなく、ライトユーザーである中産階級(サラリーマン)なのです。中産階級の人数は、富裕層の人数と比べて圧倒的に多いため、ロレックスを1本買わない中産階級のライトユーザーが、高級時計の典型的な顧客となるのです。高級ブランド所有者が多くても、その高級ブランドへの欲求度は高いため売れるのです。つまり、ロレックスを持つ人が多くても、人はロレックスが欲しいのです。多くの消費者は「自分には高級ブランドの目利き力はない」と思っています。だからブランドの人気や評判が、その高級ブランドをかうかどかの判断に影響を与えているのです。高級ブランドがお金をかけて広告を出すのは、認知度を高めて所有者を増やすためなのです

↓さらにブランディングの科学について知りたい方は↓

↓マーケティング戦略について知りたい方は↓

コメント

タイトルとURLをコピーしました