【超簡単】反物質とは|なぜ反物質は消えたか

反物質とは|なぜ反物質は消えたか 量子力学

「反物質って何? 反物質って作るのにいくらかかる? 反物質って誰が発見したの? 宇宙から反物質が消えた理由を知りたい。 物理学って何だか難しそうだな…」

こういった疑問に物理学修士の筆者が答えます。

結論

反物質とは、私たちの身の回りにある物質とは逆の電荷を持っている物質です。宇宙初期には物質と反物質が同じだけ誕生しましたが、現在の私たちの世界は物質が占めており、反物質は生成してもすぐに消えてしまいます。
詳細は本記事にて解説します。

本記事の参考文献

本記事の内容

反物質とは

反物質とは

反物質とは、私たちの身の回りにある物質とは逆の電荷を持っている物質です。例えば電子はマイナスの電荷を持っていますが、電子の反物質である陽電子はプラスの電荷を持っています。
宇宙初期には物質と反物質が同じだけ存在していましたが、何らかの理由で現在の私たちの世界ではほとんど物質だけとなりました。
現在では加速器(粒子を光の速さくらいまで加速させて衝突させる装置)でエネルギーから物質と反物質を生成させることができるようになりました。しかし反物質は発生してもすぐ物質と衝突して消えてしまいます。このようにエネルギーから物質と反物質を生成することを対生成といい、逆に物質と反物質からエネルギーを生成することを対消滅といいます。対消滅でできたエネルギーは膨大で、例えば0.25gの反物質が対消滅するだけで広島に落ちた原爆程度のエネルギーを取り出せることができるのです。ただし、0.25gの反物質を生み出そうとすると1,000垓円という費用がかかるので、現状では国家予算でも反物質を大量に作り出すことはできません。
なぜ対生成では膨大なエネルギーが発生するのかというと、アインシュタインのE=mc2が関係しています。Eはエネルギー、mは質量、cは光速度を表しています。光速度は非常に大きな値なので、少しの質量が膨大なエネルギーに相当することがわかります。例えば、車のエンジンのようにガソリンを普通に爆発させた場合より、E=mc2でガソリンを爆発させた場合の方が3億倍もエネルギーが高いのです。ちなみに太陽は1秒間に50億キログラム軽くなって私たちを照らし続けていますが、これは核融合反応と呼ばれE=mc2でエネルギーを取り出しているからなのです。

反物質の発見

反物質は1928年に物理学者ポール・ディラックがスピンを素粒子を記述する特殊相対性理論と無矛盾な方程式を見つけたことをきっかけに、電子と電荷が逆の陽電子の存在を予言しました。1932年にアメリカの物理学者アンダーソンが宇宙線の中で見つけました。そして1933年にマリー・キュリーの娘夫婦ジョリオ・キュリー夫婦が、電子の反物質である陽電子を生み出しました。さらに1955年にはカリフォルニア大学バークレー校で、大きな素粒子加速器を使って陽子の反物質である反陽子を生み出しました。

反物質はなぜ消えたのか

ビッグバン直後の宇宙空間はエネルギー密度が高く、超高温でした。何もない真空の空間にエネルギーを与えると物質と反物質がペアで生成されるので、ビッグバン直後は無数の物質と反物質が泡立つ熱水のように生成されていました。本来なら物質と反物質が同じ数だけ生成されて、同じ数だけ消滅します。つまり、この世界には物質も反物質もない状態なのです。ところがみなさんもご存じの通り、私たちや星などあらゆるものが物質でつくられています。
なぜ反物質が消えて物質だけが残ったのか、「X粒子説」、「ニュートリノ説」、「相互作用説」の3つの説があります。それぞれを解説します。

X粒子説

反陽子(陽子の反物質)が電子に変わって反物質が消えた可能性が可能性があります。
粒子は素粒子の影響を受けると他の粒子に変身する性質があります。例えばクォークにはアップクォークとダウンクォークがあり、ダウンクォークはW粒子(弱い力の基となる素粒子)を放出してアップクォークになります。このように粒子は、素粒子を介して別の粒子に変身することがあるため、反陽子などの反物質がX粒子という仮想粒子を介して物質に変身したから残ったという説があります。

ニュートリノ説

反ニュートリノ(ニュートリノの反物質)が10億個のうち1個だけニュートリノになったという説もあります。普通の粒子は電気的にプラスかマイナスのどちらかを持っているため、物質が反物質に入れ替わることはありません。しかし、ニュートリノは電気的に中性です。さらにニュートリノは光に近い速度で動きますが、ニュートリノを追い越して見ると反ニュートリノのように見えるのです。このような理由からニュートリノの影響で宇宙から反物質が消えたのではないかとされているのです。
反ニュートリノがニュートリノに変化する実験は実際に行われており、カムランド(カミオカンデの跡地に設置された観測装置)での実験が有名です。カムランドではタンクに油を入れ、その油にキセノンガスを溶かします。キセノン(原子番号54)の原子核は大きいため、その中に中性子がたくさん入っています。この中性子がベータ崩壊を起こすと電子と反ニュートリノが発生するのですが、その中性子には反ニュートリノがニュートリノに見えているとすると、中性子はもう1つの電子を放出するため、合計2つの電子が発生することになります。つまり、2つの電子が観測できれば反ニュートリノ(反物質)がニュートリノ(物質)に変化していると証明できるのです。

相互作用説

「ソ連水爆の父」と呼ばれたサハロフ(1921-1989)は物質と反物質で相互作用が違うという説を提唱しています。例えば粒子Xが粒子Yと粒子Zに崩壊するとします。するとX粒子の反物質である粒子Xは粒子Yと粒子Zに崩壊します。ここでいう崩壊は粒子の寿命が尽きて他の粒子に変身することです。すると粒子Xが粒子Yに崩壊する強さと粒子Zに崩壊する強さの和は、粒子Xが粒子Yに崩壊する強さと粒子Zに崩壊する強さの和に等しいのですが、個別の粒子Xが粒子Yに崩壊する強さと粒子Xが粒子Yに崩壊する強さが異なるため、物質の方が優位になったのです。このように物質と反物質の相互作用の非対称性をCP対称性の破れといいます。

反物質の時間反転

反物質の物質の時間反転と見なすことができます。例えば電子と陽電子は点Tで互いに衝突するとガンマ線を放ち消滅します。これは1つの電子が点Tで光を放出して、時間が逆行していくのと同じなのです。さらに1つの陽電子が点Tで光を放出して、時間が逆行するとも考えることができます。つまり反物質の物質の時間反転と見なすことができるし、物質を反物質の時間反転ともみなすことができるのです。なぜこんなことが言えるのかというと、電子や陽電子は全て同じだからです。もし電子Aと陽電子Aというような区別があったら、時間反転は成り立ちませんが、区別がつかないので電子と陽電子を時間反転で同じとみなせるのです。

反物質の実用例

癌を見つけるPET検査では「正常細胞に比べ癌細胞は3~8倍のブドウ糖を取り込む」という性質を利用しています。陽電子を放出するブドウ糖のような物質を投与し、その物質は癌のあるところにいくと陽電子と電子がぶつかってガンマ線を放ちます。その位置を特定して癌がどこにあるのかがわかるのです。

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