
「なぜJALよりANAの方が経営的に危ない? ANAの倒産する可能性は? キャッシュバーンって何? 会計学ってなんだか難しそうだな…」
こういった疑問に経営学修士(MBA)の筆者が答えます。
結論
ANAが潰れない理由は「膨大な借金」と「公募増資」です。詳細は本記事にて解説します。
TikTokの1分解説
本記事の参考文献
本記事の内容
1.ANAの経営危機

近年ANAHDは事業拡大のために積極投資を行い、有利子負債が2020年3月末時点で8,429億円ありました。そこにコロナ対応の借入金が上乗せされて、2020年9月末時点で有利子負債は1兆3155億円(JALは5,012億円)にまで膨張しました。
また2021年3月期には財務の健全性を表す自己資本比率は2020年3月期の41.4%から2021年3月期の31.4%と急落しており、従業員に夏と冬のボーナスも支給しない予定です。(JALは夏の賞与として基本級の0.3カ月分と一律10万円の特別手当を支給する予定です。)
さらに2021年3月期で、ANAのキャッシュバーンは3,941億円、JALは2660億円となりました。
キャッシュバーンとは営業活動で稼げずに流出するキャッシュ(営業キャッシュフローのマイナス額)と有利子負債の返済で消えるキャッシュ(財務キャッシュフローの有利子負債返済額)を足し合わせたもの。赤字企業が必然的に失うキャッシュの合計です。簡単にいうと、稼げない営業活動や借金の返済で失うお金です。
なぜこんなにキャッシュを溶かしているのにANAHDは潰れないのでしょうか。
2.(潰れない理由1)金融機関からの膨大な借金

ANAはコロナ下が広まってから1年後、1兆円近い手元資金を確保しています。これはお金が湯水のように沸いたからではなく、金融機関からの大借金をしています。どんなに経営が不安定でも、お金を貸してくれる銀行があれば、会社は潰れないのです。しかし、借金の割合が多くなると(自己資本比率が小さくなると)銀行は「この会社にお金を貸しても返ってこないのでは?」と思うようになり、資金調達ができず、破綻する可能性があります。
3.(潰れない理由2)公募増資

公募増資とは投資家を募集して、時価を基準にした価格で発行した新しい株を発行する、資金調達方法の1つです。
株を発行すると、自己資本比率が高まり、企業の安全性が増します。つまり銀行もお金を貸しやすくなるのです。ただし、公募増資はコストがかかるので、コロナ下のような緊急事態でもないと行うべきではないです。こうした「膨大な借金」と「公募増資」で、ANAは現在のような赤字か続いたとしても、計算上あと2年は潰れることはありません。ただ依然として、綱渡りの状況が続きます。
4.JALは大丈夫なのか?

ちなみにJALは10年前に財務破綻して、債権放棄や法人税減免などの公的資金を受けたり、大リストラを行ったりして、ANAHDより財務体質が強くなっていたため、ダメージが少なく済んでいるのです。
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